長野県長野市にある善光寺は、日本最古級の仏像を安置する寺院として、多くの人々から篤い信仰を集めてきました。その始まりは飛鳥時代の7世紀にさかのぼります。当時、インドから中国、朝鮮半島を経て日本へと伝わった仏教は、国内でも少しずつ広まりを見せており、善光寺の本尊とされる一光三尊阿弥陀如来像は、日本に初めて渡来した仏像とも言われています。この仏像を信州の地に安置したことが、善光寺の起源とされています。正式には無宗派の寺で、浄土宗や天台宗など宗派を問わず参拝を受け入れてきた点も、全国的に信仰を集める理由のひとつです。
善光寺は「一生に一度は善光寺詣り」と言われるほど、多くの巡礼者が訪れる場所で、江戸時代には街道を通じて全国から人々が集まりました。門前町には、そんな歴史の名残を感じさせる旅籠や土産物店が今も軒を連ね、かつての参拝客のにぎわいを想像させてくれます。また、善光寺は戦国時代や江戸時代の災禍にも何度も見舞われましたが、そのたびに人々の力によって再建されてきました。これらの出来事が、地域の人々にとって善光寺がいかに大切な存在であったかを物語っています。
現在の本堂は1707年に再建されたもので、国宝に指定されています。堂々としたその姿は、木造建築の美と日本人の精神文化を感じさせるものです。内部には内陣・中陣・外陣があり、仏前で静かに手を合わせる人々の姿が絶えません。特に本堂下をめぐる「お戒壇めぐり」は、完全な暗闇の中で御本尊の下にある「極楽の錠前」に触れるという体験を通じて、仏とのご縁を感じることができる独特の参拝方法です。初めての方にも深い印象を残すことでしょう。
春には境内に咲く桜が本堂をやさしく包み、秋には紅葉が彩りを添えます。季節ごとの表情もまた、訪れる人々の心を癒してくれるものです。善光寺を訪れることは、単に寺を見るという以上に、日本の精神文化や信仰の歴史に触れる大切な旅ともいえるでしょう。長野市を訪れた際には、ぜひその荘厳な雰囲気を体感してみてください。
善光寺(長野県)

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