夢の吊橋(静岡県)

 静岡県榛原郡川根本町にある「夢の吊橋」は、大間ダムの建設によってできた寸又峡(すまたきょう)のダム湖の上にかかる全長約90メートル、高さ約8メートルの吊り橋です。もともとこの地域は、南アルプスの山々に囲まれた深い渓谷地帯で、林業が盛んだったことから、山道の整備とともにこうした吊り橋が架けられるようになりました。現在の「夢の吊橋」は観光用に整備されたもので、観光客にとっては秘境に足を踏み入れるような非日常の体験が味わえる場所として人気を集めています。
 湖の水は、季節や天候によって異なるものの、晴天の日にはコバルトブルーに輝き、その神秘的な美しさが訪れる人々を魅了します。この独特の色は、チンダル現象と呼ばれる光の散乱によって生まれるもので、人工湖でありながら自然がつくり出したような美しい景観を楽しめます。吊り橋は一度に10人ほどしか渡れない構造で、足元は木製の板が並べられ、中央部分では揺れが大きくなります。そのため、高所が苦手な方には少々勇気のいる挑戦かもしれませんが、橋の真ん中で願い事をすると恋が叶うという言い伝えもあり、カップルや若い女性たちに人気のスポットとなっています。
 橋を渡り終えた先には、山道を登っていくハイキングコースが続いており、自然豊かな寸又峡の空気を存分に味わうことができます。秋には色鮮やかな紅葉が谷を覆い尽くし、訪れるたびに違った表情を見せてくれるのもこの地の魅力のひとつです。また、近くには温泉地も点在しており、歩き疲れた身体を癒すこともできます。特に寸又峡温泉は、美肌の湯として知られ、観光客にとっては吊り橋とセットで楽しめる大きな魅力となっています。
 都会の喧騒から離れ、深い山と澄んだ空気に包まれながら、静かな時間を過ごせる「夢の吊橋」は、日常では得難い体験を提供してくれる場所です。川根本町を訪れる際には、ぜひ一度足を運んでみてはいかがでしょうか。

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