愛媛県宇和島市の中心部に位置する宇和島城は、静かな海と山々に囲まれた地にたたずむ、美しい天守が印象的な場所です。市街地の小高い丘の上に築かれており、その姿は遠くからでもはっきりと確認でき、訪れる人々に凛とした風情を感じさせます。登城口から緩やかな坂道を上がっていくと、やがて石垣が姿を現し、苔むしたその表情から長い年月の積み重ねが感じられます。道中には自然の草木が生い茂り、春には桜が咲き誇り、訪れる人の足を和ませてくれます。
頂上にたどり着くと、三層三階の天守が目の前に現れます。現存する数少ない江戸時代の木造天守のひとつであり、内部には当時の建築技術を今に伝える梁や階段、窓の造りなどが残されています。特に急な階段を上って最上階に出ると、宇和島市街地と宇和海を一望でき、晴れた日には遠く佐田岬方面まで見渡すことができます。この眺めを前にすると、かつてこの場所を治めた人々が見ていたであろう景色に思いを馳せたくなります。
宇和島城が築かれたのは山と海の両方の利を活かすためであり、その立地の妙が今でもよくわかります。また、天守の周囲にはかつての曲輪や門跡が点在しており、当時の構造を想像しながら歩くのも興味深い体験です。現在は公園として整備され、市民や観光客の憩いの場として親しまれていますが、随所に残る石垣や虎口の構造から、往時の威厳を感じ取ることができます。
宇和島市はこの城を大切に守り続けており、地元の人々にとっても誇りの象徴となっています。街なかの喧騒から少し離れて、この静かで力強い空間を歩くことで、日常とは異なる時の流れを感じることができるでしょう。宇和島を訪れるならば、この城に足を運び、土地の空気と歴史の重みをじっくりと味わっていただきたいと思います。
宇和島城(愛媛県)

コメント