徳島県三好市に位置する剣山は、西日本でも有数の高峰として知られ、多くの登山者や信仰の対象として親しまれてきました。その剣山の山頂付近、標高1,955メートルの高さにそびえる巨石「御塔石(おとうせき)」の下から、ひっそりと湧き出している水があります。それが「御神水(おしきみず)」と呼ばれる清らかな湧き水です。この場所は山の静けさと澄みきった空気の中に包まれ、まるで神聖な空間に足を踏み入れたかのような感覚を与えてくれます。
御神水は、その名のとおり神の恵みのような水とされ、古くから多くの人々に大切にされてきました。湧き水は冷たく、手にすくって口に含むと、まろやかで雑味がなく、身体の内側にすっと染みわたるような感触があります。ミネラル分が豊富に含まれており、体調を整える働きがあると伝えられてきたことから、「若返りの水」「病を癒す水」としても語り継がれてきました。こうした言い伝えもあって、剣山を訪れる登山者の多くは、険しい道のりの末にこの水を味わい、旅の疲れを癒していきます。
また、御神水はその品質の高さから環境省の「日本の名水百選」にも選ばれています。これは全国の中でも特に自然環境が保たれ、水質が優れていることを示すもので、三好市の自然の豊かさを象徴する存在でもあります。この清水が湧く場所は、霧が立ちこめることも多く、日差しが差し込む朝には、水のしずくが光を受けて輝き、幻想的な雰囲気に包まれます。
剣山の登山道を進みながら、険しい岩場を越えた先でようやくたどり着くこの水源は、旅の目的地としてだけでなく、心を落ち着かせる場としても訪れる価値があります。三好市の大自然の中で、自らの手で湧き水をすくい、ひと口ふくむことで、山と水と人のつながりを深く感じることができるでしょう。剣山を訪れる際には、御神水をぜひ味わってみてください。自然の恵みとともに、心が澄み渡るようなひとときが待っています。
剣山御神水(徳島県)

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