静岡県伊東市に位置する東海館は、昭和初期に建てられた木造三階建ての建物で、もともとは温泉旅館として多くの湯治客や観光客に親しまれてきました。伊東温泉の中心地にあり、かつてはこの地に湧く豊富な湯を楽しみに、東京方面からの訪問者が多く訪れたといいます。現在は旅館としての営業は終了していますが、その趣深い佇まいや丁寧な意匠が評価され、一般公開される文化施設として再生されました。
館内に足を踏み入れると、まず目を引くのが、匠の技が随所に施された和風建築の美しさです。欄間や天井、階段の手すりに至るまで、職人たちが一つ一つ手作業で仕上げた装飾が残されており、当時の贅沢な造りを感じることができます。特に、館内を流れる湯のせせらぎが響く中庭は訪れる人々に静けさと癒しをもたらしてくれます。また、部屋のひとつひとつに異なる趣向が凝らされており、建築当時の空間美を肌で感じることができます。
この館では、伊東の温泉文化や地域の歴史について知ることもできます。かつての浴場は保存されており、現在でもその姿を見ることができるため、昭和初期の入浴風景に思いを馳せることができるでしょう。さらに、東海館の一部には郷土資料の展示や企画展のスペースも設けられており、伊東の歩んできた歳月をさまざまな角度から知ることができます。
川沿いに建つその外観は、伊東の街並みに風情を添える存在となっており、夜にはライトアップされて幻想的な雰囲気を漂わせます。周囲にはレトロな商店街も広がっており、館の見学後に散策する楽しみもあります。伊東駅からも徒歩圏内とアクセスがよく、日帰り旅行でも気軽に訪れることができるため、時間に余裕がある方はぜひ足を運んでみてはいかがでしょうか。昭和の空気をそのままに留める東海館で、静かで心落ち着くひとときを過ごすことができるでしょう。
東海館(静岡県)

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