滋賀県長浜市に位置する竹生島は、琵琶湖の北部に浮かぶ小さな島でありながら、古くから人々の信仰を集めてきた特別な場所です。この島は、まるで湖に抱かれた神聖な空間のように佇んでおり、訪れる人々に静けさと荘厳さを感じさせます。竹生島は古来より「神の住む島」として崇められ、奈良時代にはすでにその名が文献に登場しています。天平宝字年間には聖武天皇の勅願により、宝厳寺が創建され、のちに豊臣秀吉や徳川家康ら戦国武将たちも深い信仰を寄せました。
島へは長浜港や今津港から船でアクセスすることができ、上陸するとすぐにその厳かな雰囲気に包まれます。急な石段を上ると見えてくるのが、都久夫須麻神社です。平安時代から続く由緒ある神社で、現在の社殿は桃山時代に豊臣秀吉の命で建てられたものです。その装飾や建築様式には桃山文化の粋が感じられ、国宝にも指定されています。また、隣接する宝厳寺は真言宗の名刹で、本堂や三重塔からは琵琶湖を望む絶景が広がり、自然と調和した寺院の美しさを堪能することができます。
さらに、近年では「かわらけ投げ」が訪問者の間で人気となっています。かわらけという素焼きの皿を湖へ向かって投げることで、厄除けや願掛けをする風習であり、島を訪れた記念として多くの方が挑戦します。湖面を渡る風を感じながら願いを託すそのひとときは、日常から離れた特別な体験となることでしょう。
このように、竹生島は単なる観光地ではなく、長浜市の文化と歴史が凝縮された場所です。琵琶湖に浮かぶ静謐な島でありながら、人々の心に深く響く何かを持っており、過去と現在、自然と信仰が交差する貴重な空間です。訪れるたびに新たな気づきを与えてくれる竹生島は、滋賀県を旅するならぜひ足を運んでほしい場所のひとつです。
竹生島(滋賀県)

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