須佐ホルンフェルス(山口県)

 山口県萩市にある須佐ホルンフェルスは、自然が長い時間をかけて描き出した芸術のような風景が広がる場所です。日本海に面した断崖には、黒と白の縞模様が幾重にも重なり、まるで巨大な岩のキャンバスに大胆な筆致で描かれた絵画のような印象を与えます。この模様は、もともと海底に堆積した砂や泥の層が、のちにマグマの熱によって変化し、硬く焼き固められたことに由来しており、まさに地球の営みが刻み込まれた壮大な記録ともいえます。
 須佐地区の海岸線に立ってこの岩壁を見上げると、その層の美しさと力強さに思わず息をのみます。波の浸食によって切り立った崖は高さが12メートルにも及び、間近で見るとその迫力に圧倒されます。また、海と岩が織りなすコントラストは、季節や時間帯によってさまざまな表情を見せてくれるのも魅力のひとつです。特に夕暮れ時には、海に沈む太陽の光が岩肌に反射し、赤や金に染まった幻想的な景観が広がります。
 この場所は観察のしやすさも特筆すべき点で、駐車場から遊歩道を進むと、すぐ目の前に広がる光景を楽しむことができます。波の音を聞きながらのんびりと歩く時間は、日常の喧騒を忘れさせてくれるひとときとなるでしょう。さらに、近くには地元の新鮮な海産物を味わえる食事処も点在しており、散策と合わせて味覚でもこの地域を堪能することができます。
 萩市須佐は、江戸時代の風情が色濃く残る萩市中心部とはまた違った趣を持ち、海と大地のダイナミックな表現に触れることのできる貴重なエリアです。旅の途中でこの地を訪れれば、自然が創り出す壮麗な風景とともに、長い時間がもたらした地層の物語に思いを馳せることができるでしょう。都会では味わえない静けさと大自然の迫力に包まれて、心も体も解きほぐされるような体験をお楽しみいただけます。

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