白米千枚田(石川県)

 石川県輪島市に位置する白米千枚田(しろよねせんまいだ)は、能登半島の海岸沿いに広がる美しい棚田で、訪れる人々の心を惹きつける特別な場所です。この地域では古くから稲作が営まれており、険しい地形の中で人々が力を合わせて築き上げた棚田の姿は、長い年月をかけて受け継がれてきた農業文化の象徴とも言えます。白米千枚田という名前の通り、大小さまざまな水田がまるで千枚も重なっているかのように斜面に広がっており、その数は実際に1000枚を超えるとされています。一枚一枚の田んぼが非常に小さく、最も小さいもので畳一枚ほどの広さしかありませんが、それがかえってこの地の魅力を際立たせています。
 眼前に日本海を望むこの棚田では、季節や時間帯によってまったく異なる風景が楽しめます。春には水が張られ、夕日に照らされて鏡のように輝き、夏には青々とした稲が風にそよぐ様子が清々しく、秋には黄金色に染まった稲穂が収穫の喜びを感じさせます。冬になると雪に覆われ、白と黒のコントラストが静けさを一層際立たせます。また、夜間にはLEDを使ったライトアップイベント「あぜのきらめき」も行われ、暗闇の中に無数の光が浮かぶ幻想的な光景は、多くの観光客を惹きつけています。
 地元の人々によって守られてきたこの棚田は、世界農業遺産にも登録されており、その価値は国内外から高く評価されています。農業機械が入りにくい斜面という困難な条件の中、今でも人の手によって耕作が行われているという点も、この場所の特異性を感じさせます。輪島市を訪れる際には、ぜひ足を運んでいただきたい場所であり、日本の農村風景の美しさや、人と自然が共に生きる知恵と努力を肌で感じることができるでしょう。

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