瀬戸川と白壁土蔵街（岐阜県）

　岐阜県飛騨市古川町にある瀬戸川と白壁土蔵のある通りは、まるで時代をさかのぼったかのような情緒あふれる風景が広がっています。この地域は、飛騨の匠と称された優れた職人たちの技術と精神が今も息づく町として知られ、町の中心を静かに流れる瀬戸川と、その川沿いに立ち並ぶ白壁の土蔵造りの建物が、独特の美しい景観をつくり出しています。
　この川は、かつては生活用水や防火用水として町民の暮らしに欠かせない存在であり、現在も清らかな水が流れ、川の中を泳ぐ色とりどりの鯉が訪れる人々の目を楽しませています。建物の白い壁は、光を柔らかく反射し、川の水面との対比が美しく、晴れた日には特に鮮やかに映えます。
　この通りに建ち並ぶ土蔵や町家は、江戸時代から昭和初期にかけて建てられたものが多く、商家や職人の家として使われてきました。瓦屋根と格子戸、そしてなまこ壁など、伝統的な建築様式が色濃く残されており、それぞれの建物には長い年月をかけて育まれてきた暮らしの知恵と美意識が詰まっています。また、町内には地酒の蔵元や和ろうそくの工房、木工製品を扱う店舗など、飛騨の伝統文化を体験できる場所も点在しており、ただ散策するだけで地域の深い魅力に触れることができます。
　さらに、毎年4月には「古川祭」という勇壮な祭りがこの地域を舞台に行われ、町はにぎやかな雰囲気に包まれます。この祭りでは、豪華な屋台や伝統芸能、そして迫力ある「起し太鼓」の行列が繰り広げられ、地元の人々の誇りと情熱を肌で感じることができます。このように、飛騨市古川町の瀬戸川と白壁の土蔵の街並みは、古き良き日本の姿をそのままに伝えてくれる貴重な場所であり、訪れる人に深い感動を与えてくれることでしょう。