仙酔島（広島県）

　広島県福山市の鞆の浦から船でわずか5分の場所に浮かぶ仙酔島は、瀬戸内海に抱かれた自然豊かな小さな島です。名前の由来にもなった「仙人が酔うほど美しい島」という言葉通り、上陸すると目の前に広がる海の青さと、山々の緑に心を奪われることでしょう。周囲をぐるりと巡る遊歩道を歩けば、大小さまざまな入り江や、海岸線に刻まれた独特な岩の造形、さらには風に揺れる松林など、四季折々に移り変わる風景を楽しむことができます。
　島内には宿泊施設も整っており、日帰りの散策だけでなく、夕暮れから夜にかけての静けさや、朝の陽射しを浴びるひとときまで、じっくりと時間をかけてこの島の空気に触れることができます。とりわけ夜明けの空と海が溶け合う光景は、訪れる人の心に深く残るものとなるはずです。仙酔島ではまた、江戸時代の入浴法を再現した体験ができる施設もあり、昔ながらの蒸し風呂や海水浴との組み合わせで、自然との一体感を味わうことができます。
　さらに、島内には「五色岩」と呼ばれる珍しい地層が存在し、それぞれ異なる色合いを持つ岩が連なっています。このような地質は国内でも珍しく、訪れる人々の目を引く存在となっています。また、島を訪れた際には、鞆の浦側から出ている渡船を利用することになりますが、この短い船旅自体も、潮風を感じながら進む心地よい時間となります。
　仙酔島はただ景色を眺めるだけの場所ではなく、自分と向き合い、自然と語り合うようなひとときを過ごせる場所です。福山市を訪れる際には、ぜひ一度この小さな島に足を運び、静けさと豊かさに満ちた時間を味わってみてください。海のきらめきと空の広がり、そしてそこに身を置くことで感じられる静かな感動が、きっと旅の思い出をより深くしてくれることでしょう。