仙娥滝（御嶽昇仙峡）（山梨県）

　山梨県甲府市に位置する仙娥滝（せんがたき）は、御嶽昇仙峡（みたけしょうせんきょう）の中でも特に訪れる人々の心を惹きつける名所の一つです。この滝は荒川の上流にあり、花崗岩の峡谷を流れる清流が高さ約30メートルから豪快に流れ落ちる姿が圧巻です。昇仙峡そのものが、長い年月をかけて自然の力が生み出した景観であり、その中核にあたる仙娥滝は、四季折々に異なる表情を見せることで知られています。
　この地は古くから修験道の修行地としても知られており、御嶽山信仰と深く結びついています。かつては多くの修験者たちが山に分け入り、滝の清水で身を清め、心身の修養を行っていたと伝えられています。「仙娥」という名前自体は、中国の伝説に登場する月の女神・嫦娥（じょうが）に由来しており、幻想的な響きがこの地の神秘的な雰囲気をいっそう引き立てています。仙人のような存在が住まう場所とも言われたこの場所には、古来より人々の祈りや畏敬の念が込められていたのです。
　現在では、甲府市の中心部から車で約30分というアクセスの良さもあり、多くの観光客が訪れるスポットとなっています。特に秋になると、周囲の木々が赤や黄色に色づき、滝と紅葉のコントラストが見事な景観を生み出します。また、春には新緑が滝の白い流れを引き立て、夏には涼を求めて多くの人が訪れます。近くにはロープウェイや渓谷沿いの遊歩道も整備されており、自然の造形美をじっくりと楽しむことができます。
　さらに、滝の近くには水晶などの鉱物を扱う土産物店が多く並び、昇仙峡一帯がかつて鉱山として栄えた歴史も感じることができます。地元の人々が大切に守ってきたこの場所は、訪れる人々に自然の雄大さと心の安らぎを与えてくれます。雄大な自然と深い文化が交差する仙娥滝は、山梨を訪れる際にはぜひ立ち寄っていただきたい場所です。