杵築（大分県）

　大分県杵築市にある杵築は、日本の歴史と文化が息づく魅力的な場所です。この町は、江戸時代の面影を色濃く残す城下町として知られています。特徴的なのは、城を中心に南北の高台に武家屋敷が広がり、その間を商人たちの町が谷間に形成されているという独特な地形です。こうした「サンドイッチ型城下町」の構造は、全国的にも非常に珍しく、訪れる人々に深い感銘を与えます。
　杵築市を訪れると、江戸時代にタイムスリップしたかのような感覚を味わうことができます。石畳の坂道を歩けば、両側に並ぶ武家屋敷や土塀、そして丁寧に保存された古い街並みが目に飛び込んできます。特に、北台と南台をつなぐ坂道は町の象徴とも言える存在で、「酢屋の坂」や「志保屋の坂」といった名前がつけられています。これらの坂道を上り下りしながら眺める景色は格別で、江戸時代の生活を垣間見ることができます。
　さらに、杵築市の町並みには、日本人の美意識や文化の深さが詰まっています。武家屋敷群の中では、昔ながらの庭園や建築様式をそのまま見ることができ、当時の暮らしぶりを実感できます。また、商人の町には古い商家が今も多く残っており、地元の特産品や工芸品を扱う店が軒を連ねています。訪れる人は地元の人々との触れ合いを楽しみながら、地域の伝統を肌で感じることができるでしょう。
　そして、町全体を見下ろす位置にそびえる杵築城も見逃せません。この城は日本で最も小さい城の一つとして知られていますが、そこからの眺望は素晴らしく、周囲の町並みと自然が調和した景色が広がります。歴史と風景が一体となったこの場所は、訪れる人に日本の美しさと静けさを感じさせてくれます。
　大分県杵築市の杵築は、古き良き時代の雰囲気を残しながらも、現代の訪問者を温かく迎える町です。歴史ある建物や街並みを歩きながら、ゆったりとした時間を過ごせば、過去と現在が交差する特別なひとときを体験できるでしょう。