猿島(神奈川県)

 神奈川県横須賀市にある猿島は、東京湾に浮かぶ唯一の自然島として知られています。この小さな無人島は、横須賀中央駅からバスや徒歩で行ける三笠桟橋から船で約10分というアクセスの良さもあり、気軽に訪れることができる場所です。しかし、その静かな佇まいとは裏腹に、かつては日本の近代化と深く関わる重要な役割を担ってきました。
 明治時代、この島は東京湾防衛の要所として要塞化され、フランス積みと呼ばれるレンガを使った建造物が多く築かれました。当時の技術を駆使して造られた砲台跡や弾薬庫、地下通路などが今もなおそのまま残されており、まるでタイムスリップしたかのような感覚を味わえます。これらの構造物は、第二次世界大戦中にも軍事施設として使われていたため、島全体にかつての緊張感が今も静かに漂っています。
 現在では、島内を自由に歩いて回ることができ、訪れる人々は木々の間にひっそりと佇むレンガ造りの壁や、苔むしたトンネルを探検しながら、静かに流れる時間に身を委ねます。島の自然もまた魅力的で、春から夏にかけては緑が生い茂り、海辺では磯遊びや釣りを楽しむ人の姿も見られます。潮風に包まれながら、眼前に広がる東京湾の景色を眺めることができる展望スペースでは、都市と自然の共存を感じることができるでしょう。
 また、猿島は映画やドラマのロケ地としても知られ、特にその神秘的な雰囲気は観る者を惹きつけてやみません。整備された遊歩道を進んでいくと、石造りの階段やトンネルの先に広がる静かな空間に、思わず足を止めてしまう人も多いようです。日常の喧騒を離れ、歴史と自然に包まれたこの場所で、自分だけの時間を過ごしてみてはいかがでしょうか。

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