佐田岬(愛媛県)

 愛媛県伊方町にある佐田岬は、四国の最西端に位置し、瀬戸内海と宇和海を分けるように細く長く伸びた全長およそ50キロメートルの半島です。この地形の特徴から、日本一細長い半島とも称されており、その独特な地形が生み出す風景は訪れる人々の目を楽しませてくれます。左右に海を望む立地のため、場所によっては両側の海が同時に見渡せるという珍しい体験もできます。
 半島の背骨のように走る国道197号線は、「佐田岬メロディーライン」という愛称で呼ばれています。この名称は、走行中に感じられる自然の音、たとえば潮の音や風のささやき、そして野鳥のさえずりなどが一つの調和となって心に残ることから名付けられました。道中では、両側に広がる海のパノラマを見下ろしながら進むことができ、ドライブそのものが心地よい旅の時間になります。
 とくに、瀬戸農業公園の前にある直線道路では、道路表面に刻まれた細かな溝により、時速50キロメートルで走ると車のタイヤが奏でる音が「みかんの花咲く丘」という懐かしい旋律となって車内に響きます。この遊び心ある演出は、ドライバーに笑顔をもたらすだけでなく、地域の温かなもてなしの心を感じさせてくれます。
 佐田岬の先端には、真っ白な灯台が海を見守るように建っており、ここまで足を運ぶと、周囲の海と空の大きさに圧倒される感覚を味わうことができます。また、晴れた日には遠く九州・大分県の山々を望むこともでき、まさに四国の果てに立っている実感が湧いてきます。伊方町を訪れるなら、この地ならではの自然と人の営みが織りなす風景を、ゆっくり時間をかけて堪能してみてはいかがでしょうか。

コメント