香川県高松市に位置する栗林公園は、訪れる人々を静けさと美しさで包み込む、日本屈指の大名庭園です。公園の敷地は東京ドーム約16個分もの広さを誇り、六つの池と十三の築山を巧みに配した景観は、まるで一幅の絵画のような趣を醸し出しています。特に南庭と呼ばれる一帯は、江戸時代の様式を色濃く残しながら、周囲の自然と見事に調和し、季節ごとに異なる表情を見せてくれます。
この園内では、春には桜が咲き誇り、初夏には新緑が眩しく、秋には紅葉が池の水面に映えてまさに錦絵のような光景が広がります。冬には雪化粧を施した松の枝が静寂の中にたたずみ、心に深い余韻を残します。手入れの行き届いた松の木々は、その一本一本に職人の技が光り、長年にわたる人の手の温もりを感じさせてくれます。
園内の歩道をたどると、様々な角度から景観が変化し、歩を進めるごとに新しい発見があるのも魅力のひとつです。池のほとりに設けられた東屋では、風の音や水のさざめきに耳を傾けながら、静かな時間を過ごすことができます。また、和船に乗って池を巡ることもでき、水上から眺める景色はまるで別世界に迷い込んだかのような心地にさせてくれます。
さらに、園内には掬月亭という茶室があり、ここでは本格的な抹茶と季節の和菓子を味わうことができます。障子越しに庭を望みながら一服するひとときは、日常の喧騒を忘れさせてくれる貴重な体験となるでしょう。訪れた際には、地元高松市の職人が丹精込めて仕立てた和の空間にも、ぜひ目を向けていただきたいものです。
栗林公園はただ眺めるだけでなく、自らの歩みとともに風景が移り変わっていく「動く庭」として、多くの人々を魅了してきました。高松市にお越しの際には、ぜひゆっくりと時間をとって園内を巡り、日本の美意識と四季の移ろいを肌で感じてみてください。
栗林公園(香川県)

コメント