音戸の瀬戸(広島県)

 広島県呉市に位置する音戸の瀬戸は、風光明媚な海峡として多くの人々を引きつけています。呉市街地から車でほど近く、瀬戸内海の穏やかな水面と、急流の潮流が織りなす光景が印象的な場所です。この狭い海峡は、本州と倉橋島を隔てる水道で、海面から橋がアーチを描いて架かっており、その姿は訪れる人々の記憶に深く刻まれることでしょう。
 この海峡の開削には、かの有名な平清盛の逸話が語り継がれています。清盛が一日で開いたとされる伝説が残っており、今もその壮挙を讃えるように、「日招き伝説」の碑や清盛塚などが周辺に設けられています。海峡の両岸には、彼の事績をしのぶような景観が整えられ、歩きながらその時代に思いを馳せることができます。
 音戸の瀬戸には、赤いアーチ型の音戸大橋と、新しく建設された第二音戸大橋が並んで架かり、陸と島をしっかりとつないでいます。特に、音戸大橋の鮮やかな朱色は青空や夕焼けの中で際立ち、写真愛好家にも人気のある撮影スポットとなっています。また、橋の上から見下ろす海峡の流れや、行き交う船の様子を眺めると、まるで時間がゆったりと流れているような感覚に包まれます。
 周辺には、音戸の瀬戸公園が整備されており、春には桜、秋には紅葉が楽しめることで知られています。特に春の時期には、山の斜面を彩る花々と海峡のコントラストが美しく、多くの観光客が訪れます。園内からは音戸大橋を間近に望める場所もあり、季節ごとに異なる風景が心を和ませてくれます。
 加えて、音戸には地元の漁港もあり、新鮮な海産物を味わうことができます。海沿いの食事処では、瀬戸内の恵みを活かした料理が提供され、旅の楽しみに花を添えてくれます。呉市を訪れた際には、海峡を渡る風と、かつての人々の営みに思いを馳せながら、ぜひ足を運んでいただきたい場所です。

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