愛媛県上浮穴郡久万高原町に位置する面河渓(おもごけい)は、石鎚山の南麓に広がる清流と断崖絶壁が織りなす渓谷美が印象的な自然の宝庫です。石鎚山系を水源とする面河川が長い年月をかけて岩を削り、その流れに沿って続く約10キロにおよぶ渓谷には、エメラルドグリーンの水面が広がり、季節ごとにさまざまな表情を見せてくれます。特に夏場は水の透明度が高く、深い淵の底まで見通せるほどで、川辺に立つだけで心が洗われるような感覚を味わうことができます。
渓谷沿いには遊歩道が整備されており、「五色河原」や「虎ヶ滝」など、特徴的な名称を持つ場所を巡りながら進むことができます。川の両岸には花崗岩や石英斑岩といった岩壁がそびえ、なかには高さ100メートルを超える断崖もあります。これらの岩肌には苔や山野草が張りつくように生え、湿潤な空気とあいまって神秘的な雰囲気を醸し出しています。秋には紅葉が渓谷を鮮やかに彩り、多くの写真愛好家や登山客が訪れる場所となります。
面河渓の入口には「面河山岳博物館」があり、石鎚山系の地質や動植物に関する資料が展示されています。この地域に生息する高山植物や野鳥の生態を知ることで、渓谷を歩く際により深い自然とのつながりを感じることができます。面河川はアマゴやアユなどの渓流魚が棲む清流でもあり、夏には釣りを楽しむ人々の姿も見られます。また、川の水は冷たく澄んでいるため、暑い時期には足を浸して涼をとるのにもぴったりです。
久万高原町は標高が高く、夏でも比較的涼しいため、避暑地としても人気があります。面河渓の周辺にはキャンプ場や休憩所も整備されており、家族連れでも安心して過ごせる環境が整っています。自然と静寂のなかで過ごすひとときは、日常の喧騒を忘れさせてくれる癒しの時間となることでしょう。石鎚山への登山口としても利用されるこの地は、訪れる人々に雄大な自然と深い安らぎを同時に提供してくれる場所です。
面河渓(愛媛県)

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