虹の松原(佐賀県)

 佐賀県唐津市に位置する「虹の松原」は、日本を代表する松林の一つとして古くから親しまれています。静岡県の三保の松原、福井県の気比の松原と並んで、日本三大松原のひとつに数えられており、その名前の由来は、唐津湾沿いに弧を描くように続く姿が、まるで空にかかる虹のようであることからつけられたと伝えられています。海辺の風景に溶け込むように、約4.5キロメートルにわたって広がる松の列は、まさに自然と人の手が調和した風景といえるでしょう。
 この広大な松原は、江戸時代初期に唐津藩の藩主が風と砂から町を守るために整備を始めたとされ、以来、数百年にわたって大切に保たれてきました。現在ではその数、およそ100万本ともいわれるクロマツが植えられており、訪れる人々を優しく包み込むような緑の空間を形作っています。陽光が差し込む林の中を歩けば、松葉の間からこぼれる光と潮風が心を和ませ、砂浜へと続く小径はまるで物語の一場面に迷い込んだような感覚を呼び起こしてくれます。
 「白砂青松」という言葉がよく似合う場所でもあり、白く輝く浜辺と、深緑の松のコントラストが、目にも鮮やかな景観を作り出しています。とくに朝や夕方には光の加減によって松の影が伸び、幻想的な雰囲気を醸し出します。また、車で松林の中を走ると、両脇に立ち並ぶ松の列がトンネルのようになり、まるで自然の回廊をくぐっているかのような心地よさを味わうことができます。
 さらに唐津市街からほど近い鏡山の展望台に足を運べば、松原全体を一望でき、その弓なりの形状や海との織りなす風景が、より立体的に感じられます。展望台から見下ろすと、松林の先に広がる唐津湾と、その背後に続く山並みが一体となって描く風景は、訪れる人の記憶に深く刻まれることでしょう。唐津市に訪れた際には、ぜひこの自然の芸術とも呼べる松原を、自らの目と足で感じていただきたいと思います。