栃木県那須町に位置する那須湯本温泉は、那須連山の豊かな自然に囲まれた歴史ある温泉地です。その起源はおよそ千三百年前にさかのぼり、奈良時代に開湯されたと伝えられています。古くから「鹿の湯」として知られ、傷ついた鹿がこの湯に浸かり傷を癒したという伝説が残っています。現在もこの名を冠した「鹿の湯」は、温泉街を象徴する存在として、多くの人々に親しまれています。
那須湯本温泉の湯は強酸性の硫黄泉で、肌に触れるとピリッとした感触がありますが、これが皮膚を活性化し、美肌や傷の回復に良いとされています。源泉かけ流しの湯は、湯温の違いによって細かく浴槽が分かれており、好みに応じた湯浴みを楽しむことができます。温泉街の中心には、白濁した湯けむりが立ち上る「湯畑」があり、硫黄の香りとともに温泉地ならではの情緒を醸し出しています。
また、那須湯本温泉の周辺には、自然や文化を満喫できるスポットが点在しています。那須高原の雄大な景色を望む「殺生石」は、かつて猛毒を放つと恐れられた岩で、日本三大妖怪伝説の一つとしても知られています。九尾の狐にまつわる伝説が残り、荒涼とした岩場に硫黄の香りが漂う独特の景観は、訪れる人々を魅了してやみません。また、近くには那須温泉神社があり、古くから湯治の神として信仰を集めています。境内には、温泉の守護神を祀る社があり、参拝すれば旅の安全や健康長寿を願うことができます。
温泉街には風情ある旅館や共同浴場が点在し、地元の食材を生かした郷土料理を味わえる宿も多くあります。特に那須和牛や地元の野菜を使った料理は絶品で、温泉とともに心身を癒すひとときを提供してくれます。さらに、周辺には美術館や動物とふれあえる施設などもあり、温泉とともに観光を楽しめるのも那須湯本温泉の魅力の一つです。
那須町の豊かな自然と歴史に彩られた那須湯本温泉は、日常の喧騒を忘れ、心安らぐ時間を過ごせる場所です。温泉に浸かりながら四季折々の風景を楽しみ、古くから伝わる文化や伝説に思いを馳せることで、旅の思い出がより深いものとなるでしょう。
那須湯本温泉(栃木県)

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