宗像大島(福岡県)

 福岡県宗像市に属する大島は、玄界灘に浮かぶ周囲約15キロの島で、神湊港から市営フェリーでおよそ25分という距離にあります。島に降り立つと、海と山に抱かれた静かな風景が広がり、訪れる人々を穏やかな空気で包み込みます。市街地の喧騒から離れ、自然と信仰の気配に触れられる場所として、心を落ち着けたい方には格好の旅先です。
 この島には、宗像三女神のひとりである市杵島姫神を祀る「中津宮」があり、朱色の社殿が緑の中に美しく映えています。本殿の背後には御嶽山(みたけさん)がそびえ、その山中には沖ノ島の神を遠くから拝むための「沖津宮遥拝所」が設けられています。そこまでの道のりは緩やかな山道で、片道30分ほどの軽い登山となりますが、山頂にたどり着くと、眼下に広がる海と沖ノ島の輪郭を望むことができ、静寂の中に深い祈りの場の雰囲気が漂います。
 島の南東側には「かんす海水浴場」があり、波が穏やかで家族連れにも親しまれています。透明度の高い海での水遊びはもちろん、磯場も近く、小さな子どもたちが生き物を探して遊ぶ姿もよく見かけられます。この一帯では夏の海の楽しみを満喫できます。島の西岸や高台からは、晴れた日に玄界灘の向こうに沈む夕陽を眺めることができ、その情景は訪れる人の心を静かに打ちます。
 大島では、漁業が今も暮らしの中心にあり、港周辺には地元の海産物を扱う店や食堂が並びます。新鮮な魚介を使った料理は、観光の合間に味わいたい島の魅力のひとつです。また、毎年10月に行われる中津宮の秋季例祭では、地元の人々が神輿を担ぎ、伝統の舞を奉納しながら、古くからの信仰と生活が今も息づいていることを感じさせてくれます。
 宗像市の大島は、古代からの信仰の流れを現在に伝えながら、ゆったりとした自然の時間を肌で感じることができる場所です。日常から少し離れ、心静かに過ごしたい旅には、まさにふさわしい島といえるでしょう。