三朝温泉（鳥取県）

　鳥取県東伯郡三朝町にある三朝温泉は、静かな山あいにたたずむ湯のまちとして、長く人々に愛されてきました。三徳川のせせらぎに耳を傾けながら、湯煙の立ち上る情景に包まれるこの地は、訪れる人の心と体をゆっくりと癒してくれます。澄んだ湯に身を沈めれば、肌にやさしく寄り添うような温もりが広がり、日々の疲れを忘れさせてくれるような穏やかなひとときを過ごすことができます。
　この地に湧く湯は、世界的にもめずらしいラドンを多く含む泉質で知られており、深いリラックスを誘うだけでなく、体の内側から温まるような感覚が特徴です。温泉街には昔ながらの旅館や湯治宿が点在しており、長期滞在を楽しむ方も多く見られます。また、三徳川沿いに設けられた「河原風呂」は、誰もが自由に利用できる露天風呂として親しまれ、川の流れを眺めながら開放的な気分で湯を楽しむことができます。
　日が暮れる頃、春と秋には温泉街が幻想的な光に包まれる季節の催しが行われます。「三朝温泉 和紙灯り」と名づけられたこのイベントでは、三朝神社を中心に、色とりどりの和傘や和紙玉、藤かずらを使った灯りが並び、夜のまち歩きに彩りを添えます。柔らかな光に照らされた温泉街は、まるで夢の中に迷い込んだかのような幻想的な雰囲気に包まれ、訪れる人々を魅了します。普段とは異なる表情を見せる夜の三朝を歩けば、湯のぬくもりとともに、忘れられない記憶が刻まれることでしょう。
　そして、三朝温泉を訪れたなら、近隣の三徳山にも足を延ばしてみてください。険しい山中に建てられた三仏寺投入堂は、その姿を一目見るだけでも心が震えるような存在感を放っています。自然の厳しさと信仰の深さが結びついた場所で、静かに時を感じることができます。
　三朝町は、湯とともにある暮らしが息づくまちです。訪れるたびに新しい発見があり、季節を変えて何度でも訪れたくなるような魅力にあふれています。