身延山(山梨県)

 山梨県南巨摩郡身延町にある身延山は、古くから多くの参拝者を引きつけてきた霊峰であり、日蓮宗の総本山・久遠寺を中心にした信仰と文化が息づく場所です。鎌倉時代の1274年、日蓮聖人が身延山の地に入山し、布教と著述の拠点としたことがその始まりとされています。彼は晩年をこの地で過ごし、身延山は日蓮宗における最も重要な聖地としての地位を確立しました。その後、歴代の門弟や信者によって整備が進められ、現在のような壮大な伽藍が築かれていきました。
 久遠寺の境内は、四季折々の風情が感じられる自然に包まれており、とりわけ春のしだれ桜や秋の紅葉の時期には、多くの人々が訪れます。久遠寺へと続く「菩提梯(ぼだいてい)」と呼ばれる石段は、287段もの階段が一直線にのび、登りきった先に荘厳な本堂が待っています。この石段を一歩一歩踏みしめながら登ることで、自らの心を清めるという意味合いもあり、多くの参拝者がこの道を選びます。
 また、ロープウェイを使えば、標高1,000メートルを超える奥之院思親閣まで気軽に足を延ばすことができます。ここは日蓮聖人が両親を思って祈りを捧げた場所とされ、眼下には富士川や富士山の雄大な姿が広がる、まさに心洗われるような光景が望めます。山頂周辺には整備された遊歩道もあり、自然散策や森林浴を楽しむ人々にも親しまれています。
 身延山の周辺には、門前町の風情が残る商店街もあり、精進料理やゆば、身延まんじゅうといった地元の味を楽しむこともできます。長い年月の中で積み重ねられてきた人々の祈りや営みが今も脈々と息づいており、訪れる人々はただの観光以上の静かな感動を覚えることでしょう。山梨県身延町を訪れた際には、この豊かな精神文化と自然美が溶け合う空間に、ぜひ身をゆだねてみてください。

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