眼鏡岩(長崎県)

 長崎県佐世保市に位置する「眼鏡岩」は、自然が長い年月をかけて生み出した不思議な形をした岩で、訪れる人々をひと目で魅了します。この岩は、高さおよそ10メートル、幅にして20メートルほどあり、その堂々とした姿はまるで巨大な橋のようにも見えます。岩の中央部には左右対称に大きな穴が二つ開いており、それがちょうど眼鏡のような形をしていることから「眼鏡岩」と呼ばれるようになりました。
 今では静かな山間に佇むこの岩も、かつてこの一帯が海だった頃には、波の力にさらされていた場所であり、長年にわたる浸食によって現在のような姿に形作られていきました。その岩に空いた二つの丸い穴は、まるで彫刻家が意図して彫り上げたかのように美しく、自然の造形力の偉大さを改めて感じさせてくれます。
 また、この場所には古くから伝えられるユニークな話が残っており、人々の想像をかき立てます。かつてここには鬼が住んでいたとされ、昼寝をしていたその鬼が大きく伸びをした際に、勢いよく蹴ったことで岩に穴が空いたというものです。まるで絵本の世界から飛び出したようなこの言い伝えは、訪れた人の心に自然と温かみを与え、子どもから大人まで楽しめる話題として語り継がれています。
 眼鏡岩の周囲は緑豊かな環境に囲まれており、季節ごとに移り変わる自然の表情を堪能することができます。特に春から夏にかけては、木々の新緑が岩の背後を彩り、爽やかな空気の中で散策を楽しめます。また、天気の良い日には、岩の隙間から差し込む光が絶妙な陰影をつくり、写真愛好家たちにも人気の場所となっています。
 佐世保市の市街地からもアクセスしやすく、小さなハイキング気分で訪れることができるため、家族連れや観光客にも親しまれています。人工物では決して表現できない自然の造形美と、それに添えられた伝説が交差するこの場所は、佐世保の静かな魅力を感じるにはぴったりの場所です。岩の形に思いを馳せながら、自然と昔話に囲まれたひとときを過ごしてみてはいかがでしょうか。