和歌山県東牟婁郡串本町にある串本海中公園海中展望塔は、紀伊大島と本州との間に広がる美しい海を足元から感じられる特別な場所として、多くの訪問者に親しまれています。この施設は、日本で初めて指定された海中公園区域に位置しており、サンゴや熱帯魚など豊かな生き物たちの息づかいを間近に観察することができます。展望塔までは海に突き出した橋を歩いて向かい、その先にそびえる白い塔の内部へと入ると、らせん状の階段を下っていく構造になっています。
塔の最下層には円形の窓が数カ所設けられており、水深6.3メートルの世界が目の前に広がります。海中には色とりどりの魚が群れをなして泳ぎ、季節によってはウミガメや回遊魚の姿も確認されます。透明度の高い海のおかげで、水の中にいるような臨場感を味わえるのが魅力のひとつです。また、展望窓の外を泳ぐ魚の種類は非常に多く、特に串本周辺で見られるテーブルサンゴの群生が、幻想的な海中の景観を彩ります。
天候や潮の状況によって海中の様子は刻々と変わるため、何度訪れても違った表情を見せてくれるのが特徴です。晴れた日には水中の光が差し込み、波のゆらぎとともに水底がキラキラと輝く様子が見られます。雨の日でも魚たちは活発に泳ぎ回り、観察には影響が少ないため、天候に左右されにくいスポットとしても知られています。さらに、展望塔の手前には海の生き物に関する展示施設やタッチプールなどが併設されており、子どもから大人まで幅広い世代が楽しめるよう工夫されています。
串本町の海は黒潮の影響を強く受けており、温暖な気候と豊かな海洋生態系が特徴です。その環境を体感できるこの展望塔は、ただ眺めるだけでなく、自然との一体感を味わえる貴重な場所といえます。日常ではなかなか目にすることのできない海中世界への扉を開くこの施設は、訪れる人々に新たな発見と驚きをもたらしてくれることでしょう。
串本海中公園海中展望塔(和歌山県)

コメント