唐戸市場（山口県）

　山口県下関市にある唐戸市場は、関門海峡を望む海辺に位置し、訪れる人々に活気と味覚の楽しさを届けてくれる場所です。この市場では、地元で水揚げされた新鮮な魚介類が豊富に並び、早朝から多くの人々でにぎわいを見せています。なかでもフグは下関を代表する特産として知られており、刺身や唐揚げ、ちり鍋などさまざまな調理法で提供されるため、初めて訪れる方にも食の魅力を強く印象づけてくれます。
　建物の中には、卸売業者や鮮魚店が軒を連ね、対面販売ならではのやり取りが交わされており、地元の人々と観光客が自然に交じり合う様子が見られます。また、週末や祝日には「活きいき馬関街」と呼ばれるイベントが開催され、握り寿司や海鮮丼、焼き物などがその場で味わえる屋台形式の販売が行われます。観光で訪れた方々が市場の中央に設けられたイートインスペースで、海を眺めながら新鮮な料理を頬張る姿も多く見受けられ、五感で海の恵みを楽しむことができます。
　市場の周辺には、海響館やカモンワーフなどの施設があり、徒歩で気軽に散策を楽しむことができます。関門海峡に面したロケーションからは、対岸の北九州市門司港エリアを望むこともでき、潮風を感じながら歩く時間も旅の記憶に残ることでしょう。また、明治から昭和初期にかけての面影を残す赤レンガの建物や石造りの倉庫などが点在しており、散歩がてらにその風情を楽しむこともできます。
　唐戸市場は、ただ食材を買うための場所ではなく、人々の交流や地域の文化、そして海とのつながりを感じられる空間として、多くの人に愛されています。下関市を訪れる際には、朝の早い時間に足を運ぶことで、にぎやかな市場の雰囲気を一層味わうことができるでしょう。海の恵みと人の温かさが交差するこの場所は、心に残る旅のひとときを演出してくれます。