千葉県の南東部に位置するいすみ鉄道は、房総半島の自然豊かな風景の中を走るローカル線として知られています。この鉄道は、大原駅(いすみ市)から上総中野駅(大多喜町)までを結び、およそ26.8キロメートルの距離を走っています。もともとは国鉄木原線として開業した路線で、1988年に第三セクター方式によって「いすみ鉄道株式会社」として再出発を遂げました。国鉄の再編成によって多くの地方路線が廃止される中、地域住民の移動手段を守り、地元の魅力を発信する役割を担ってきました。
車窓から広がる景色は、どこか懐かしさを感じさせる里山や田園風景が続き、四季折々の彩りが楽しめます。春には菜の花が線路沿いを黄色く染め、特に三月から四月にかけては多くの観光客がこの美しい光景を目当てに訪れます。また、昭和の雰囲気を残す駅舎や手書きの看板など、どこか昔の日本を思い出させる要素が点在しており、写真撮影にもぴったりの場所です。
さらに、いすみ鉄道では観光列車「レストラン・キハ」も運行されており、旧型気動車の車両に揺られながら地元の食材を活かした料理を味わうことができます。これは鉄道ファンのみならず、美味しいものを求める旅行者にも好評で、事前予約が必要な人気の企画となっています。鉄道そのものの魅力に加え、いすみ市や大多喜町の地域資源と結びついた体験ができるのが、この鉄道の大きな特長といえるでしょう。
沿線には、江戸時代の城下町として栄えた大多喜町の歴史的な街並みや大多喜城、さらには地元産の新鮮な農産物を扱う直売所などもあり、列車に乗って訪れるだけで一日を通して地域の文化と自然を満喫できます。静かな時間の流れの中で、日本の原風景とあたたかい人々に出会える旅。それが、いすみ鉄道が今もなお多くの人々に愛され続ける理由の一つです。
いすみ鉄道(千葉県)

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