伊勢志摩スカイラインは、三重県伊勢市から鳥羽市へと至る全長約16.3キロメートルの観光道路で、豊かな自然と壮大な景観を楽しむことができるルートとして多くの旅行者に親しまれています。この道路は1964年、昭和39年に開通しました。当時、日本は高度経済成長の真っただ中にあり、自家用車の普及に伴ってドライブ観光が注目されるようになりました。伊勢志摩スカイラインもその流れの中で誕生し、伊勢神宮への参拝とあわせて、伊勢湾や太平洋の絶景を楽しむことができる新しい観光のスタイルを提供しました。
伊勢市の内宮付近から入ると、道はなだらかな山道を登りながら朝熊山(あさまやま)へと続いていきます。標高555メートルの山頂付近には「天空のポスト」として知られる赤い郵便ポストが設置されており、その場で手紙を出すと、「天空の地」から届いたような特別な記念になります。また、晴れた日には伊勢湾を見下ろす大パノラマが広がり、運が良ければ遠くに知多半島や渥美半島まで見渡すことができます。夕暮れ時には空と海が茜色に染まり、息をのむような景色が目の前に広がります。
途中には展望台や足湯の施設もあり、長旅の疲れを癒しながらのんびりと過ごすことができます。特に朝熊山頂展望台からの眺めは格別で、伊勢市街や鳥羽市街、さらには志摩半島の入り組んだリアス式海岸まで一望できます。道中には四季折々の自然が楽しめ、春は桜、秋は紅葉が彩りを添えます。冬でも比較的温暖な気候のため、雪による通行止めの心配が少ないのも魅力の一つです。
さらに、かつてこの道は「朝熊山参詣道」として信仰の対象であった朝熊山への登山道の役割も果たしており、多くの参拝者が足を運ぶ霊山としての側面もあります。現在でも沿道には小さな祠や石仏が点在し、かつての信仰の名残を感じさせてくれます。伊勢神宮へのお参りに加えて、このルートを通ることで、伊勢志摩の自然と文化の両方をじっくりと味わうことができます。
伊勢志摩スカイライン(三重県)

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