二見浦 夫婦岩(三重県)

 三重県伊勢市にある二見浦の夫婦岩は、古くから人々の信仰を集めてきた美しい海岸の象徴です。大小二つの岩が縄で結ばれて並んで海に立つ姿は、まるで寄り添う夫婦のようであることから「夫婦岩」と呼ばれています。この岩は、古代から伊勢神宮を参拝する人々が心身を清める場所として訪れていた二見興玉神社の御神体とされており、神聖な場所とされています。
 かつては伊勢神宮を訪れる前に、まずこの二見浦で海水を浴びて身を清める「浜参宮」という風習がありました。現在でもその名残として、白装束を身にまとって神事を行う姿を見ることがあります。夫婦岩の向こう側には、日の出の名所としても知られる絶景が広がっており、特に夏至の時期には、岩の間から太陽が昇る光景を見ることができます。この瞬間を求めて、早朝から多くの人々が訪れます。
 また、夫婦岩の間に張られた注連縄は、年に数回、地域の人々の手によって張り替えられます。長さは35メートル以上にも及び、5本の縄で繋がれた姿は圧巻です。この縄は、俗世と神の世界を分ける結界の意味があり、神聖さを保つために重要な役割を果たしています。
 二見浦の海岸沿いには、昔ながらの町並みや宿が残っており、訪れる人にどこか懐かしい日本の風景を感じさせます。近くには水族館や伊勢忍者キングダムなど家族で楽しめる施設も多く、観光の拠点としても便利な場所です。また、神社の境内ではカエルの像が多く見られますが、これは「無事に帰る」や「貸したものが返る」「若がえる」といった意味が込められており、旅の安全を願うお守りとして親しまれています。
 伊勢市を訪れるならば、ぜひこの二見浦の夫婦岩に立ち寄り、自然の美しさとともに古より続く信仰の心に触れてみてはいかがでしょうか。潮風と波音に包まれながら、心が静かに整うひとときを過ごすことができるはずです。

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