ほったらかし温泉(山梨県)

 山梨県山梨市に位置する「ほったらかし温泉」は、富士山や甲府盆地を一望できる絶景のロケーションにあり、自然との一体感を味わえることで知られています。この温泉は、比較的新しく整備された施設ながら、地元の人々によって守られてきた湯の恵みを活かし、近年注目を集める存在となりました。1999年に正式に開業されるまでの間、山の中腹に湧く源泉は長らく手つかずのまま存在しており、それを地元の有志たちが「せっかくの湯だから、手を加えすぎずに活かしたい」という想いで整備を進めたことが、現在の「ほったらかし」というユニークな名前にも表れています。この名前には、「お客様の楽しみ方は自由にお任せします」という意味合いも込められており、過剰なサービスを排し、自然と対話するようなひとときを大切にしている姿勢が感じられます。
 施設は二つの浴場、「あっちの湯」と「こっちの湯」に分かれており、それぞれに異なる魅力があります。「あっちの湯」は特に日の出を見るために訪れる人が多く、夜明け前から営業している日もあるため、澄んだ空気の中、太陽が山の稜線から昇る瞬間を湯に浸かりながら迎えることができます。一方の「こっちの湯」はやや落ち着いた雰囲気で、甲府盆地の広がりを眺めつつ、静かに湯のぬくもりを味わうことができます。どちらの浴場からも富士山の姿を望むことができ、天候に恵まれればその雄大な姿を湯船の中から間近に感じることができます。
 また、温泉の周囲には地元の食材を活かした軽食を提供する売店や、木造の素朴な休憩スペースなどもあり、訪れる人々に心地よい時間を提供しています。山の斜面に沿って作られた施設は、人工的な整備を最小限にとどめており、まるで山に抱かれて湯に浸かっているかのような感覚を覚えるでしょう。アクセスは車が便利で、山梨市街からのドライブもまた自然豊かな風景の中を進む楽しい体験となります。四季折々で姿を変える山々の景色とともに、心と身体をゆっくりとほぐすことができる場所として、訪れる価値のある温泉地といえるでしょう。

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