平尾台(福岡県)

 北九州市小倉南区に広がる平尾台は、日本三大カルストの一つとして知られており、その景観は訪れる人々を驚かせる不思議な魅力に満ちています。この台地一帯は標高300メートルから700メートルに及び、南北に約6キロメートル、東西に約2キロメートルにわたって石灰岩が点在し、まるで羊の群れが草原に寝そべっているような「羊群原」と呼ばれる風景が広がっています。これは、長い年月をかけて雨や地下水が石灰岩を少しずつ溶かしていったことで生まれた独特な姿で、人の手ではとても作り出せない自然の造形美を感じさせてくれます。
 この地域には「ライオン岩」や「キス岩」など、見る人の想像をかきたてる名前が付けられた岩々が点在しており、それぞれが自然と時間の合作であることを実感させてくれます。また、石灰岩の隙間から力強く伸びている「ど根性木」も、生命のたくましさを象徴する存在として多くの人の注目を集めています。こうした景色を楽しみながら歩くトレッキングコースは、初心者から経験者まで幅広い層に親しまれており、春や秋には特に多くのハイカーでにぎわいます。
 地上の風景に加えて、地下にも驚きがあります。代表的なのが「千仏鍾乳洞」で、長靴を履いて進むほどの水流が足元を流れる通路の先には、無数の鍾乳石が幻想的な空間を作り出しています。「目白洞」や「牡鹿洞」など、整備された洞窟もあり、安心して内部を見学することができますが、より冒険心を満たしたい方には、ヘルメットとヘッドライトを装着して挑む「ケイビング体験」がおすすめです。自然のままの洞窟を探検するこの体験は、地球の内側に足を踏み入れたような感覚を味わわせてくれます。
 また、「平尾台自然の郷」では、そば打ちや陶芸といった手仕事を体験できるほか、広々とした芝生広場や展望施設も整っており、家族連れや団体客にも人気の場所です。平尾台はただ眺めるだけではなく、五感を使ってその雄大な自然に触れ合うことができる、北九州市が誇る貴重な自然空間なのです。