下呂温泉合掌村（岐阜県）

　岐阜県下呂市にある下呂温泉合掌村は、白川郷などに見られる伝統的な合掌造りの家屋を移築・復元した施設で、飛騨地方の暮らしや文化を身近に感じることができる場所です。この合掌村は、もともと各地に点在していた貴重な建築物を保存し、後世に伝えるために整備されたもので、古民家の保存と地域文化の継承を目的として誕生しました。合掌造りの建物は、雪深い山間地に適した急勾配の屋根が特徴で、冬でも雪が積もりにくく、また屋根裏では養蚕が行われていたことなどから、かつての人々の知恵と生活の工夫を感じ取ることができます。
　村内には江戸時代から明治時代にかけて建てられた十数棟の合掌家屋が移築されており、建物の中には当時の生活用具や農具が展示されていて、昔の暮らしぶりを垣間見ることができます。また、民俗資料館として公開されている家屋もあり、飛騨地方特有の年中行事や風習についても学ぶことができます。さらに、体験工房では陶芸や紙すきなどの手作り体験が可能で、旅の思い出を自らの手で形にすることができます。
　下呂温泉合掌村の魅力は建築や文化だけにとどまらず、周囲の自然環境とも調和した景観にもあります。春には桜が咲き誇り、夏には新緑がまぶしく、秋には紅葉、冬には雪化粧と、四季折々の風情が訪れる人を楽しませてくれます。また、村の一角には足湯も設けられており、下呂温泉の源泉に触れながら、のんびりと過ごすこともできます。近くには実際の下呂温泉街も広がっており、村の散策を終えた後に温泉に浸かって旅の疲れを癒すことも可能です。
　岐阜県下呂市という自然豊かな地域に位置するこの場所では、歴史ある建物の中で静かな時の流れを感じながら、日本の伝統文化に触れる特別なひとときを過ごすことができます。訪れるたびに新たな発見があり、何度でも足を運びたくなるような、心温まる空間です。