藤井寺は、徳島県吉野川市鴨島町にある四国遍路第十一番札所のお寺です。阿波国の府中に近い場所に位置し、古くから地域の信仰とともに歩んできました。境内に一歩足を踏み入れると、市街地に近い立地でありながらも静けさが広がり、長い巡礼の道のりの中で心を落ち着かせてくれる存在であることが感じられます。
この寺は、弘法大師空海が修行の折に開いたと伝えられ、薬師如来を本尊として祀っています。病や心身の不調に悩む人々の祈りを受け止めてきたとされ、古くから「薬師の寺」として親しまれてきました。四国遍路の中でも、十番札所を終えた巡礼者が次なる厳しい道に備え、心身を整える場として重要な役割を果たしてきたといわれています。
境内には、簡素ながらも整えられた伽藍が並び、本堂や大師堂は落ち着いた佇まいを見せています。派手さはありませんが、その分、参拝者は仏さまと静かに向き合うことができ、読経の声や線香の香りが心に染み入ります。長い年月を経た石段や庭の木々からは、数え切れないほどの巡礼者を迎えてきた時間の重みが伝わってきます。
藤井寺が特に印象深いのは、ここから先に続く遍路道です。次の札所へ向かう道中には険しい坂道が待ち受けており、古来より修行の正念場とされてきました。そのため、多くの巡礼者がこの寺で気持ちを引き締め、無事を祈って出立します。徳島市国府町という身近な土地にありながら、四国遍路の厳しさと尊さを実感させてくれる藤井寺は、巡礼の記憶に深く刻まれる一寺といえるでしょう。
藤井寺(徳島県)
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