長崎県諫早市小長井町を訪れると、国道207号線沿いに現れる不思議な光景に目を奪われることでしょう。それは、まるでおとぎ話の世界から飛び出してきたかのような巨大なフルーツたちが道端に並んでいるというものです。実はこれらは、れっきとしたバス停なのです。イチゴ、メロン、スイカ、ミカン、トマトなど、色とりどりの果物を模したバス停が、町のあちこちに点在しています。そのユニークな形と愛らしさから、訪れる人々の間で思わず写真を撮りたくなるスポットとして人気を集めています。
このバス停は、もともと1990年に行われた「長崎旅博覧会」に合わせて整備されたものでした。当時、小長井町(現在の諫早市の一部)は、自分たちの町を訪れる人々に楽しい印象を残し、地元産品にも関心を持ってもらいたいという思いから、このユニークなデザインを採用したのです。町の特産品であるミカンをはじめとした果物をモチーフにすることで、地域の魅力を自然に伝えることができると考えられました。
このアイデアは見事に成功し、設置から30年以上経った今でも、多くの人々が訪れるきっかけとなっています。特に最近ではSNSの普及により、思いがけず道沿いに現れる巨大フルーツに驚いた観光客が、次々と写真を投稿するようになり、じわじわとその名が広まりました。写真の中では、カラフルな果物と一緒に笑顔を見せる旅行者や、まるで果物に飲み込まれたように中でポーズを取る人の姿もよく見かけます。
現在では町を巡るようにして、複数のフルーツバス停を訪れる人も多く、それぞれのデザインの違いや背景にある地元の想いを感じながら歩くのも楽しい時間となっています。小長井町は、有明海を望む風光明媚な土地で、海岸線沿いの穏やかな風景とともにこのバス停の存在がより際立ちます。まさに、小さな驚きと温かなユーモアに包まれた、心がふっと和む旅の途中のひとときとなるでしょう。
フルーツバス停(長崎県)
