栄春堂(山形県)

 山形県東部に位置する天童市は、全国でも有数の将棋駒の生産地として知られています。この町では、職人たちが伝統の技を受け継ぎ、手作業で駒を作り続けています。そんな天童市の中でも、訪れた人が間近で職人技を体験できる場所の一つが「栄春堂」です。
 ここでは、実際に職人が木の駒に一文字ずつ丁寧に刻み込んでいく様子を見ることができます。駒に直接筆で文字を描く「書き駒」、刻んだ文字に漆を流し込む「掘り駒」、さらに何度も漆を重ねて立体的に仕上げる「盛り上げ駒」など、技術の違いによる仕上がりの変化も楽しめます。店内には、これらの駒が美しく並べられ、見ているだけでも職人の技術の高さを感じ取ることができます。
 また、天童市自体も将棋文化が色濃く根付いた町であり、街中には将棋駒をモチーフにしたモニュメントや看板が点在しています。特に、春には「人間将棋」というイベントが開催され、大きな盤の上で甲冑に身を包んだ人々が駒となり、対局が繰り広げられます。この風景はまるで戦国時代の合戦のようで、全国から多くの観光客が訪れます。
 栄春堂のような施設を訪れることで、単なるお土産としての駒を見るだけでなく、職人たちの技や想いに触れ、より深く将棋文化を知ることができます。天童市の伝統を支える職人の技を体感しながら、世界に一つだけの駒を手に入れるのも、この地ならではの楽しみ方の一つです。

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