カーサ・ロマ(カナダ)

 トロントに位置するカーサ・ロマは、20世紀初頭のカナダにおける豪華な城のような邸宅です。この壮麗な建物は、実業家であり、軍事指導者でもあったサー・ヘンリー・ペラットによって建設されました。彼は大成功を収めたエネルギー産業に携わり、その富を活かして自身の夢であった中世のヨーロッパの城を再現することにしました。彼の夢を具現化するため、建設は1911年に開始され、300人以上の職人たちが約3年をかけて完成させました。カーサ・ロマとはスペイン語で「丘の家」を意味し、その名にふさわしく高台に建てられたこの邸宅からは、トロントの市街地やオンタリオ湖を一望することができます。
 カーサ・ロマの外観は、ゴシック・リバイバル様式を基にしたデザインで、尖塔や装飾的なガーゴイルなど、中世ヨーロッパの要素が随所に取り入れられています。内部に一歩足を踏み入れると、豪華な装飾と広々とした部屋が広がり、ペラットの贅を尽くしたライフスタイルを感じることができます。特に注目すべきは、巨大な舞踏室で、天井は精巧な装飾が施されており、窓からは美しい庭園が広がる風景が楽しめます。また、図書室やワインセラー、さらには秘密の通路など、ペラットのこだわりが詰まった独自の空間も存在しています。
 ペラットの夢が結実したカーサ・ロマですが、その栄華は長く続きませんでした。彼の事業は第一次世界大戦の影響で衰退し、莫大な建設費と維持費が重荷となり、最終的に彼はこの邸宅を手放すことを余儀なくされました。その後、カーサ・ロマは一時期ホテルやナイトクラブとして利用されましたが、現在ではトロント市が所有し、博物館として一般公開されています。
 訪れる人々は、当時の豪華な生活を体感しながら、ペラットの波乱に満ちた人生や彼が築いた富の背後にある物語に思いを馳せることができます。また、四季折々の美しい庭園や、邸宅全体に施された細部に至るまでの職人技を楽しむことができるため、カーサ・ロマはトロントを訪れる際にはぜひ足を運んでほしい場所のひとつです。

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