分杭峠（長野県）

　長野県伊那市に位置する分杭峠（ぶんくいとうげ）は、中央構造線という日本列島を東西に貫く巨大な断層の上にあり、古くから特別な場所として知られてきました。この峠は、標高1,424メートルの位置にあり、南アルプスの山々に囲まれた静かな場所で、自然の中に身を置くことで心身が癒されると多くの人々に語られています。
　かつては修験道の行者たちが通った霊地の一つともされており、峠の周辺には修行の痕跡が点在していたと伝えられています。こうした背景からも、この場所には昔から「特別な力が宿る場所」としての意識が根付いていたようです。現代では、この地が「ゼロ磁場」と呼ばれるエネルギースポットとして注目されるようになり、全国各地から訪れる人が後を絶ちません。
　ゼロ磁場というのは、地球の磁力が打ち消し合って安定しているとされる地点であり、身体のバランスが整いやすいとされています。特に分杭峠は、中央構造線上にあることから地質学的にも注目され、自然の持つエネルギーを感じられる場所とされています。訪れる人々は、峠に立ち、深呼吸をしながら周囲の空気を感じることで、心が落ち着き、疲れが癒されると話します。
　また、周囲の自然も四季折々の美しさを見せてくれます。春には新緑が目にまぶしく、夏は木陰が涼しさをもたらし、秋には色とりどりの紅葉が峠を彩ります。冬は雪に包まれ、静寂の中にたたずむ景色が幻想的です。車でのアクセスが制限される時期もあるため、訪れる際には事前の確認が必要ですが、その不便さもまた、自然との距離を近づけてくれる一因となっています。
　伊那市が整備したシャトルバスを利用して峠まで向かうことができ、環境保護の観点からも訪問者の行動が配慮されています。人工物の少ないこの地では、日常の喧騒を離れて、自分自身と向き合う時間を持つことができるでしょう。心と体を静かに整えたいと願う方には、分杭峠はまさにふさわしい場所と言えるかもしれません。