徳島県徳島市に位置する眉山は、その優美な稜線がまるで人の眉のように見えることから名付けられたと伝えられています。この山は、標高290メートルと決して高くはありませんが、市内のどこからでもその姿が望めることから、古くから人々に親しまれ、心のよりどころともなってきました。万葉集には「眉のごと雲居に見ゆる阿波の山」と詠まれており、悠久の昔から変わらぬ姿で徳島の風景に溶け込んでいます。
現在では、市民や観光客の憩いの場として多くの人々が訪れます。徳島市の中心部からアクセスが良く、山麓と山頂を結ぶ眉山ロープウェイを利用すれば、約6分で頂上に到着します。ロープウェイ山麓駅は「阿波おどり会館」の建物内にあり、観光と文化を一度に楽しめるのも魅力のひとつです。ゴンドラに乗ってゆっくりと上がっていくと、次第に広がる市街地の風景や、吉野川の流れが目の前に迫り、短いながらも印象的な空の旅となります。
山頂にたどり着くと、そこには徳島市を一望できる絶好の眺望が広がります。晴れた日には、淡路島や紀伊半島まで視界が開け、遠くに瀬戸内海の穏やかな海面を感じることもできます。昼間の明るい風景はもちろんのこと、4月から10月にかけては夜9時までロープウェイが運行しているため、夜の帳が下りるころに訪れると、街の灯りが宝石のようにきらめく夜景も堪能できます。眼下に広がる光の海を見渡しながら、静かに流れる時間を過ごすのは格別の体験となるでしょう。
また、眉山にはいくつかの展望台や散策路が整備されており、自然を感じながらのんびり歩くのもおすすめです。春には桜が咲き誇り、秋には紅葉が山肌を彩り、季節ごとに異なる表情を見せてくれます。市街地のすぐそばにありながら、豊かな自然と静けさを感じられる眉山は、徳島市を訪れるなら一度は足を運んでおきたい場所です。
眉山(徳島県)

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