阿波国分寺(徳島県)

 阿波国分寺は、徳島県徳島市国府町に位置する、四国遍路の中で第十五番札所として知られる古刹です。周囲には田園風景が広がり、初めて訪れる方でも心が落ち着く穏やかな空気に包まれています。都心部からほど近い場所にありながら、境内に一歩足を踏み入れると、長い年月を経て受け継がれてきた信仰の深さを自然と感じ取ることができます。
 この寺は、奈良時代に聖武天皇の発願によって全国に建立された国分寺の一つと伝えられています。阿波の地を代表する官寺として、仏教による国の安寧と人々の幸せを願う役割を担ってきました。その後、時代の移り変わりとともに幾度も災害や荒廃を経験しながらも、地域の人々や巡礼者の支えによって守り継がれてきた歩みが、現在の静かな佇まいの中に息づいています。
 境内の中心には本堂が構えられ、ご本尊である薬師如来が安置されています。病や心の悩みを癒す仏として信仰を集め、遍路道中の無事や健康を祈る参拝者が絶えません。堂内に漂う厳かな雰囲気は、長い巡礼の途中で立ち寄る人々の気持ちを優しく整えてくれます。
 また、境内には国分寺ならではの伽藍配置の名残が感じられ、塔跡と伝わる場所などからは、かつての壮大な寺観を想像することができます。季節ごとに表情を変える草木や、静かに響く読経の声が重なり合い、訪れる時期によって異なる趣を楽しめるのも魅力です。
 阿波国分寺は、華やかさよりも落ち着きと温もりを大切にした寺院であり、四国遍路の旅の中で自分自身と向き合う大切な時間を与えてくれます。徳島市の歴史と信仰を今に伝えるこの第十五番札所は、巡礼者だけでなく、阿波の文化に触れたい観光客にとっても、心に残る場所となることでしょう。