高知県土佐清水市にあるあしずり温泉は、足摺岬の岬先端に位置し、太平洋の雄大な景色とともに心身を癒すひとときを提供してくれる場所です。温泉地としての成り立ちは古く、かつてこの地を訪れた弘法大師空海が、金剛福寺の建立に際して湧き出ていた湯に浸かり、旅の疲れを癒したと伝えられています。それから千年以上ものあいだ、人々の間で語り継がれてきたこの湯は、やがて「虎年の大変」と呼ばれる大地震の影響で源が失われることとなりました。
地中深くに眠っていたその湯が、現代の技術によって再び地上に蘇ったのは、平成元年のことです。掘削によって再発見された源泉は、平成11年に整備され、現在のあしずり温泉郷として新たな姿を見せるようになりました。この湯はラドンを含むことで知られ、入浴することで肌がしっとりと整い、身体の内側から温まる感覚が味わえるとして、多くの人々がその効能に魅了されています。とくに女性客からの支持が高く、「美肌の湯」として親しまれています。
湯船に浸かりながら目を向けると、広がるのは空と海とが溶け合うような水平線。日が落ちる頃には、真っ赤に染まる海と空が重なり合い、日常では見ることのできない絶景が訪れる人を迎えます。夜には波の音が心地よく響き、空を見上げれば星々がまるで降り注ぐように輝いています。この地を訪れる人々は、温泉のぬくもりとともに、大自然が織りなす音と光に包まれながら、静かな時を過ごすことができます。
また、あしずり温泉の周辺には金剛福寺をはじめ、四国八十八ヶ所の霊場や、足摺岬灯台などの風情ある場所も点在しており、ゆったりと散策を楽しみながら、自然と文化にふれあうことができます。土佐清水市のこの地でしか味わえない時間が、旅人の心に深く残ることでしょう。
あしずり温泉(高知県)
