足利学校跡(栃木県)

 栃木県足利市にある足利学校跡は、日本最古の学校として広く知られており、その落ち着いた佇まいの中に長い歴史と学びの精神が息づいています。設立の時期については諸説ありますが、奈良時代から平安時代にかけて創設されたとされ、室町時代には関東管領・上杉憲実によって再興されてから大いに栄えました。この上杉憲実が学問の振興を重視し、京都から多くの書物を取り寄せて書庫を充実させたことにより、足利学校は東国随一の学問所として知られるようになりました。
 江戸時代に入ると、徳川幕府の保護を受けながらも、儒教を中心とした教育機関として独自の地位を築いていきました。そのため、僧侶や武士、地方の名士など多くの学び手がこの地を訪れ、学問を修めたと伝えられています。しかし、明治維新の時代になると近代的な教育制度の整備に伴い、足利学校は役目を終え、閉鎖されることとなりました。
 現在の足利学校跡では、当時の雰囲気を再現した整備が施され、学問に勤しんだ人々の姿が目に浮かぶような空間が広がっています。門をくぐると、まず目に入るのは「入徳門」と呼ばれる風格ある建物で、そこから中へ進むと、かつての講義が行われていた「方丈」、貴重な書物を収めた「書院」などが丁寧に復元されており、静謐な空気に包まれながら当時の学び舎の姿を感じることができます。
 また、敷地内には日本庭園が広がっており、四季折々の風景を楽しみながら、心静かに過ごすことができます。訪れる人々は、知を求める者たちの足跡をたどるようにゆったりとした時間を過ごし、学問の尊さに思いを馳せることでしょう。足利市を訪れた際には、この学びの源を訪ねることで、日本の教育の原点に触れる貴重な体験ができるはずです。

コメント