ポルトガルのエルヴァスは、スペイン国境に近いアルト・アレンテージョ地方に位置する要塞都市で、その歴史は中世にまでさかのぼります。都市の起源はローマ時代にあり、戦略的に重要な拠点として長い間多くの文明がこの地を支配してきました。後にイスラム勢力の支配下に置かれましたが、12世紀にポルトガル王国が再征服し、その後も防衛拠点として重要視され続けました。
エルヴァスを訪れると、まず目を引くのは巨大な城壁群です。この城壁は何層にも渡り、フランスの築城家ヴォーバンの影響を受けた設計が施されています。特に17世紀にはスペインとの戦争に備え、城壁は大規模に強化されました。このようにして、エルヴァスはポルトガルでも屈指の防衛要塞都市として発展していきました。要塞は都市全体を取り囲み、歩いて回ることができるほど広大です。街を歩くと、この壮大な防御システムの一部としての歴史的建造物が随所に見られ、かつての戦いの名残を感じさせます。
また、エルヴァスにはアモレイラ水道橋という見事な構造物もあります。長さ7km以上、高さ30mにも達するこの水道橋は、16世紀に完成し、かつてこの都市の生活を支えました。壮大なアーチ構造が連なり、都市の風景を一層魅力的に彩っています。
さらに、エルヴァスにはいくつかの教会や修道院も存在しており、特にサンタ・クララ修道院は訪れる価値があります。この修道院は美しい内装や芸術作品が多く、静かな祈りの場としても知られています。また、エルヴァス大聖堂も立派な建物で、ゴシック様式とルネサンス様式が融合した特徴的な建築が見どころです。市内の狭い石畳の通りを歩いていると、古い家屋や広場が点在し、歴史を感じさせる趣があります。
都市の北部には、世界遺産に登録された要塞化された丘陵地があります。そこには、サンタ・ルジア砦とグラサ砦があり、どちらも素晴らしい眺めを楽しむことができます。これらの砦は、17世紀の戦争の際に建設され、都市を防御するための重要な役割を果たしました。現在もその保存状態は良好で、訪れる者にかつての壮絶な防衛戦の雰囲気を感じさせます。
エルヴァスは、単に歴史的な遺産としての魅力だけでなく、今も息づくポルトガルの文化や生活様式を感じることができる場所です。
エルヴァス(ポルトガル)

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