焼山寺は、徳島県名西郡神山町の山深い地にたたずむ、四国遍路第十二番札所のお寺です。市街地から離れた標高の高い場所にあり、到着までの道のりそのものが修行の一部と感じられるような、厳かな空気に包まれています。山門をくぐると、日常の喧騒から切り離された静寂が広がり、古くから多くの巡礼者が心身を整える場として歩みを進めてきた理由が自然と伝わってきます。
この寺は、弘法大師空海が修行の折に開いたと伝えられ、かつては山岳信仰の霊場として深く信仰されてきました。山の霊気が満ちる場所で火難除けや厄除けを祈願したことが名の由来ともいわれ、長い年月の中で人々の暮らしと信仰に寄り添ってきました。戦乱や災害による荒廃を経験しながらも、その都度再建され、現在に至るまで祈りの灯が絶えることなく受け継がれています。
境内では、素朴で力強い本堂や大師堂が、周囲の自然と調和しながら佇んでいます。季節ごとに表情を変える山々に囲まれ、春は新緑、秋は紅葉が美しく、訪れる時期によって異なる趣を楽しむことができます。特に静かな朝の時間帯には、澄んだ空気の中で読経の声が響き、心が洗われるような感覚を覚えるでしょう。
焼山寺は、四国遍路の中でも難所として知られていますが、その分、たどり着いた際の達成感は格別です。険しい道の先に待つ静かな境内は、自分自身と向き合う貴重な時間を与えてくれます。神山町の豊かな自然とともに、歩いてきた道の意味を深く感じさせてくれる寺として、今も多くの巡礼者や観光客を静かに迎え入れています。
焼山寺(徳島県)
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