徳島県板野郡上板町にあるお寺、安楽寺は、四国遍路の八十八ヶ所霊場の中で第六番札所にあたるお寺です。かつてこの地では温泉が湧き出しており、その効能を深く尊んだ開祖の弘法大師が、病苦に悩む人々を救う仏として薬師如来を刻み、お堂を建立したのが、安楽寺のはじまりと伝えられています。こうして、温泉と仏のご加護が結びつく場として、この地は古くから多くの人々の信仰を集めてきました。
その後、戦国時代の兵火により旧地(安楽寺谷と呼ばれた場所にあったと言われます)は焼失しましたが、現在の場所にあった旅人やお遍路さんの宿を兼ねた寺院(駅路寺)と統合され、再興されました。これにより、安楽寺は、札所としてだけでなく訪れる者を受け入れる寺としての役割を担うようになりました。
境内に足を踏み入れると、まず目に留まるのは立派な山門。門をくぐると、庭や池、本堂、そして多宝塔などが広がり、訪れる人の心を静かに落ち着かせます。本堂のほかにも、大師堂や多宝塔には、かつて著名な仏師によって彫られた仏像が安置され、荘厳な空気が漂います。また「さかまつ」と呼ばれる松の古木――これは弘法大師が手植えしたと伝えられる松で、厄除けの力を持つとされ、長年信仰の対象となってきました。
さらに、安楽寺の大きな魅力のひとつが、今も湧き続ける温泉──その温泉による湯治の伝統が、創建の時から受け継がれていることです。お遍路の途中で心身の疲れを癒すことができる宿坊があり、歩き遍路の人々には初日の泊まりとして重宝されてきました。実際、この宿坊は400年近い歴史をもち、現在も宿泊施設として、多くの参拝者や旅人を迎え入れています。
このように、安楽寺は「湯」と「仏」が結びついた特別な寺院であり、心と体を癒す場として古くから親しまれてきた場所です。徳島県を訪れた際には、ただ寺を巡るだけではない、“湯宿” としての安楽寺で、ゆったりとした時間を過ごしてみるのもおすすめですよ。
安楽寺(徳島県)
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