長崎県長崎市に属する沖合の小さな島、端島は、その独特な外観から「軍艦島」と呼ばれ、多くの人々の興味を引きつけています。遠くから眺めた姿がまるで軍艦のように見えることがこの呼び名の由来となっており、現在は無人島となっているこの場所にもかつては活気に満ちた日常が存在していました。海底に眠る豊かな資源を掘り出すために海を埋め立て、住宅や学校、病院、商店など生活に必要なあらゆる設備がひしめき合うように整備され、島内は限られた面積の中で驚くほど密集した都市空間が築かれていました。
人口が最盛期を迎えた昭和の時代には、東京以上の人口密度を誇っていたとも言われており、小さな島に数千人が暮らしていた様子は今では想像しがたいものです。炭鉱としての役割を終えた後、人々が島を離れ、時とともに建物は朽ちていきましたが、崩れかけた鉄筋コンクリートの集合住宅や巨大な採掘施設の残骸は、かつての賑わいと人々の営みを今に伝える貴重な風景となっています。
現在では上陸が制限されており、個人で自由に訪れることはできません。長崎市内から出航するクルーズ船を利用することになり、事前に誓約書や承諾書の提出が求められることから、専門のツアー業者を通じた手続きが必要です。船に揺られながら近づく島影が視界に現れた瞬間、多くの人が言葉を失うような迫力を感じることでしょう。島に上陸すると、ガイドの案内に従いながら安全な見学ルートを進み、かつての坑道入り口や住宅跡、防波堤などを間近に観察することができます。
こうした景観は「明治日本の産業革命遺産」として国際的にも認められており、世界の近代化に貢献した技術と労働の記憶を今に残しています。長崎市を訪れた際には、ぜひこの島を目にして、過去と現在が交錯する独特の時間を感じていただきたいと思います。静けさのなかに息づく歴史の重みが、きっと忘れがたい印象を残すことでしょう。
軍艦島(長崎県)
