佐賀県嬉野市の温泉街を歩いていると、町の中心部にふわりと湯けむりが立ちのぼる小さな広場に出会います。そこにあるのが「シーボルトのあし湯」です。石造りの円形の浴槽に、嬉野温泉のとろみのある湯が静かに注がれ、訪れる人々をそっと迎え入れてくれます。この足湯は、24時間いつでも無料で利用することができ、観光途中のひと休みに、または夜の散策の締めくくりにと、地元の方から旅行者まで、幅広い層に親しまれている施設です。
名前に冠されている「シーボルト」は、かつて嬉野の湯を訪れたとされるドイツ人の医師にちなみます。医学と自然科学に通じたその人物が、嬉野の湯に興味を持ち、当地を訪れたという記録が残されていることから、この名がつけられました。そんな由緒ある名を持つこの足湯には、湯の力を少しでも多くの人に体感してほしいという願いが込められているように感じられます。
お湯に足を浸すとすぐに感じられるのが、嬉野温泉独特のなめらかさです。とろりとした感触はまるで化粧水のようで、肌にまとわりつくような優しさがあります。そのまま数分も浸かっていれば、足先からじんわりと温まり、旅の疲れや歩き疲れがゆっくりとほぐれていくのを実感できるでしょう。そして湯から上がったあとの肌の変化にも驚かされます。まるで一皮むけたようにツルツルとした感触になり、温泉の恵みを確かに感じることができます。
あし湯の周囲には、腰かけられるベンチも設けられており、湯に浸かりながら会話を楽しんだり、周囲の風情を眺めたりと、思い思いの時間を過ごせます。夜にはライトアップされ、やわらかな光に照らされた湯気が幻想的な雰囲気を醸し出します。昼と夜で違った表情を見せてくれるのも、この足湯の魅力の一つです。
嬉野市を訪れた際には、ぜひこの「シーボルトのあし湯」で、湯の温もりと町のやさしさを心ゆくまで感じてみてください。
シーボルトのあし湯(佐賀県)
