呼子朝市(佐賀県)

 佐賀県唐津市の北部に位置する呼子町は、玄界灘に面した小さな港町で、その中心部にある「呼子朝市」は、早朝から活気に満ちた雰囲気が広がる場所として知られています。この市場は、全国的にも珍しい通りの両側にずらりと並んだ露店形式で展開されており、地元の漁師さんや農家の方々が、自らの手で獲ったり育てたりした海産物や野菜を、直接観光客や地元の人々に販売しています。特に午前中の早い時間帯には、威勢の良い掛け声とともに新鮮な魚やイカが並べられ、その様子を見るだけでも心が弾みます。
 呼子町は、古くからイカの産地として知られており、朝市にも透き通ったイカが店頭に並びます。中には生きたまま泳いでいるものもあり、その場でさばいて提供してくれる店舗もありますので、新鮮さをそのまま味わうことができます。また、干物や練り物などの加工品も充実しており、お土産選びにも最適です。さらに、漁港の近くという立地ならではの海の香りと、呼子独特の穏やかな人情に触れながら歩くだけで、港町ならではの情緒を体感することができます。
 通りのあちらこちらには、イカをモチーフにした看板やイラストが見られ、町全体がイカへの誇りを感じさせる演出で満ちています。また、朝市の合間には、近くにある呼子大橋を背景にした海辺の景色を楽しんだり、町の小さな路地を散策したりするのもおすすめです。観光客との何気ない会話を楽しみにしている出店者の方も多く、会話を通じて呼子の暮らしぶりや季節ごとの漁の話を聞けることもあります。
 唐津市呼子町を訪れるなら、ぜひ朝の早い時間に出かけて、この独特の空気を五感で味わっていただきたいです。晴れた日には青空の下、潮風を感じながら歩く朝市の通りが、一日の始まりにふさわしい鮮やかな記憶として残ることでしょう。食べる楽しみと、ふれあいの温かさが溶け合った場所、それが呼子朝市の魅力です。