唐津くんち(佐賀県)

 佐賀県唐津市で毎年11月2日から4日にかけて催される「唐津くんち」は、まち全体が熱気に包まれる盛大な祭りです。舞台となるのは唐津神社で、地元の人々にとっては一年を通して最も心躍る行事のひとつです。期間中、市内には赤や金を基調にした色鮮やかな曳山が次々と姿を現し、勇壮な囃子と力強い掛け声にあわせて、まちなかを進んでいきます。その迫力と美しさに、訪れる人々は思わず息を呑むことでしょう。
 この祭りの最大の魅力は、なんといっても全14台の曳山の存在です。最初に登場する「赤獅子」から、最後の「七宝丸」まで、それぞれに異なる造形や色彩が施されており、どの曳山も手仕事の粋が集まっています。金箔や漆を使った豪華な仕上がりは、まるで動く芸術作品のようです。重さは2トンから4トンにもおよび、それを多くの曳子たちが力を合わせて曳きまわす様子は圧巻です。「エンヤ、エンヤ」「ヨイサ、ヨイサ」という掛け声が空に響き、祭りのリズムに観客も自然と引き込まれていきます。
 なかでも、11月3日に行われる「御旅所神幸」が特に盛り上がりを見せます。これは唐津神社を出発した神輿と曳山が、西の浜まで巡行する行程で、海を背景にした曳山の姿は非常に印象的です。日中の賑わいもさることながら、夜の曳山も見逃せません。提灯に照らされた曳山が、幻想的な光に包まれて動く様子は、昼間とはまた違った魅力があります。
 唐津市の人々にとって「唐津くんち」は、単なる祭りではなく、地域の誇りそのものです。何世代にもわたってこの行事に関わってきた家々も多く、子どもから大人まで、まち全体が一体となって準備に携わります。その熱意と結束が、三日間でのべ50万人を超える来訪者を惹きつけてやまない理由なのでしょう。唐津の伝統と情熱が凝縮されたこの祭りに、ぜひ一度足を運び、肌でその迫力と美しさを感じてみてください。