福岡県糟屋郡新宮町に属する相島は、博多湾の北部に浮かぶ小さな島で、博多港から北東へおよそ17キロ、新宮漁港からはわずか数キロの距離にあります。島の面積はおよそ1.25平方キロメートルとコンパクトながら、訪れる人に穏やかな海と自然の息吹、そして昔ながらの漁村の情景を感じさせる魅力にあふれています。
島の玄関口となる相島港に降り立つと、まず目に飛び込んでくるのは素朴でどこか懐かしい風景です。石積みの堤防沿いには漁船が並び、漁師たちの営みが今も続いています。集落の中を歩けば、入り組んだ路地と石垣に囲まれた家々が立ち並び、ゆったりとした時間が流れていることを実感できます。
相島は、島全体がまるで一つの公園のような印象を与える場所です。歩いて一周しても1時間ほどで回れるため、島内散策がしやすく、随所に美しい海辺の風景が広がります。特に北側の海岸線では、玄界灘の青い海が広がり、晴れた日には遠く志賀島や能古島を望むことができます。海に面した岩場や遊歩道では、潮の香りを感じながら、波音に耳を傾けるひとときが心を癒してくれるでしょう。
この島が「猫の島」として知られるようになったのは、近年になってからのことです。人の数よりも多いのではないかと言われるほどの猫たちが、あちこちでのんびりと暮らしています。観光客を見てもまったく警戒せず、日向ぼっこをしたり、漁師の作業を眺めたりして過ごす様子は、写真好きな方にも人気です。ただし、猫たちの健康を守るため、エサの持ち込みや無断での接触には配慮が求められています。
また、島内には石造りの古墳や、李氏朝鮮の使節団が遭難して一時滞在したと伝わる記録が残るなど、意外なつながりを感じさせる場所もあります。そうした歴史の断片が、島の素朴な風景にさりげなく溶け込んでいるのも魅力のひとつです。
相島は、新宮町の新宮港から定期船でおよそ20分。都市部からのアクセスも良く、気軽に離島の雰囲気を味わえる貴重な場所です。喧騒を離れて、静かで穏やかな時間を過ごしたい方にはぴったりの旅先といえるでしょう。
相島(福岡県)
