足摺海底館(高知県)

 土佐清水市にある足摺海底館は、足摺宇和海国立公園の一角にあり、太平洋の大海原に抱かれるように建てられた高さ24メートルの構造物です。この施設は、海と人とが出会う場所として、訪れる人々に特別な体験をもたらしています。入口から続く展望室に立つと、目前に広がるのはどこまでも続く蒼い水平線。晴れた日には、空と海の境目が曖昧になるほどの美しさが楽しめます。そして、らせん階段を静かに降りていくと、やがて到達するのが水深7メートルの海中世界です。
 その空間はまるで別の世界。丸い海中窓の向こうには、サンゴの周囲を舞うソラスズメダイの群れ、ひょっこり姿を現すハリセンボン、悠々と泳ぐメジナなど、色とりどりの魚たちが現れます。直径60センチの窓は視界が広く、まるで自分がダイバーになったかのような気分に浸れます。特に透視度の高いこの海域では、魚の表情や鱗のきらめきまで目に映り、訪れるたびに異なる表情を見せてくれます。
 季節の移り変わりによっても海の様子は様変わりし、イワシやキビナゴなどの群れが現れる時期には、それらを追ってブリやイカが姿を見せることもあります。こうした自然の営みを間近に感じられるのは、この場所ならではの醍醐味といえるでしょう。
 周辺には、同じく土佐清水市が誇る施設として、黒潮の恵みをテーマにした足摺海洋館「SATOUMI」や、海の透明度を活かしたグラスボート、貝殻や海の資料を集めた「海のギャラリー」などもあり、半日から一日かけてこのエリアの海と自然をたっぷりと堪能できます。都会では味わえない、静かで豊かな時間がここには流れています。