愛媛県伊予市の双海町に位置する下灘駅は、まるで映画のワンシーンのような情景が広がる場所として、多くの人の心を惹きつけています。海沿いに建つこの無人駅は、ホームに降り立った瞬間、目の前いっぱいに広がる瀬戸内海の青と、穏やかな波音が旅人を出迎えてくれます。駅のすぐ向こうには防波堤や建物もなく、視界を遮るものがほとんどないため、まるでホームが海へと続いているかのような錯覚に包まれます。
この駅の最大の魅力のひとつが、その静けさと開放感にあります。電車の本数は1時間に1本程度と少ないものの、それがかえってこの場所の特別な時間の流れを際立たせています。人の少ない時間帯には、瀬戸内海と駅と自分だけの世界に入り込んだような気持ちになり、思わず時間を忘れてしまいます。駅のベンチに腰掛け、ゆっくりと流れる雲や、遠くを行き交う船を眺めるだけでも、心が癒やされるひとときとなります。
特におすすめしたいのが夕暮れ時です。双海町は「沈む夕日が立ち止まる町」として知られ、天候に恵まれれば、水平線にゆっくりと沈んでいく夕日が海面を朱色に染め上げる、息を呑むような光景が目の前に広がります。日が沈む瞬間、ホーム全体が金色に包まれ、訪れた人々が自然と無言になるほどの美しさが辺りを満たします。その一瞬を写真におさめようと、カメラを手にした旅行者や、恋人同士、家族連れが訪れる姿も多く見かけられます。
アクセスはJR予讃線での列車利用が基本ですが、周辺をドライブする人も多く、車での訪問もおすすめです。駅周辺には駐車場もあり、海岸沿いの国道378号を走れば、美しい海岸線を眺めながらの爽快なドライブが楽しめます。また、駅の近くには地元食材を使ったカフェや、夕日をテーマにした小さな休憩スポットなども点在し、のんびりとした旅の途中に立ち寄るのにもぴったりです。
この駅を訪れることで、日常の喧騒を離れ、ただ海を眺め、風に吹かれるという贅沢な時間を味わうことができます。伊予市双海町の下灘駅は、心をゆっくりとほどく旅のひとときを与えてくれる、そんな場所です。
下灘駅(愛媛県)

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